相場表
札幌中心部オフィスの市況及び相場 2024年3月
【札幌中心部のオフィスビル市況は供給回復するも賃料が高止まり】 2023年12月末時点の札幌ビジネスオフィス市況は空室面積45,048㎡(13,627坪)と前年同月の空室率2.19%から0.69%増加し2.88%となりました。 新規供給は、2023年5月竣工の「D-LIFEPLACE札幌」貸室面積11,319㎡(3,424坪)、7月竣工の「CRES CUBE」貸室面積2,154.67㎡(651.79坪)、8月竣工の「The Link Sapporo」貸室面積11,817.83㎡(3,574.9坪)、11月竣工の「桂和大通ビル51」貸室面積6,390.73㎡(1,933.2坪)、12月竣工の「T-PLUS札幌」貸室面積5333.55㎡(1,613.4坪)の5棟です。 8月竣工の「The Link Sapporo」はほぼ未稼働となっており空室率上昇に影響しますが、他はいずれも高稼働となっています。5棟合計では37,015.78㎡(11,197.29坪)の新規供給がありましたが、市内中心部全体の調査対象貸室面積は2017年の水準に止まっており、空室率は微増していますが、依然として供給不足の状態が継続しています。 需要の増加要因としてはコロナ禍の本格的な終息による一般需要の回復がみられる点と、札幌市の「大札新」の誘致施策によりIT/BPO関連企業の増床が続いている点が挙げられます。コールセンターの進出が鈍化し、拡張を予定しての予備空間確保も減少してきており、かろうじて需給バランスを保っている状態です。 2023年の5棟竣工、2024年には10棟竣工予定、2025年には貸室面積1,000坪を超える大型ビルが3棟竣工を予定していますが、大きな減床予定が無いため、実質的な新規供給増となる見込みです。 ここへきて、急激な建築資材、物価、人件費上昇の上に建築労働者不足の状況で、建築費は高騰しており、新築予定の設計施行の変更が見られ、根本的な計画の見直しも始まっています。空室率上昇の原因は地区相場を大きく超える大型新築ビルの未稼働が主因ですが、賃料上昇傾向の継続見込みから、募集賃料を下げる動きは少なく、空室率上昇の現況から、新築ビルではフリーレント(賃料部分の無料期間)対応の動きも見られるようになってきました。2025年度の新築増床に向けて、この傾向は今後も継続していくと考えられます。 【2024年~2025年竣工予定のオフィス床を含む新築ビル】 〔札幌駅前通り周辺地区〕 2024年3月予定「(仮称)N北3条ビル新築工事」8F 延床面積1,209.69㎡(365.93坪) 〔札幌駅北口地区〕 2024年4月予定「(仮称)Noblesse Sapporo」7F 延床面積1,647.92㎡(498.49坪) 2025年11月予定「(仮称)京阪北7西5オフィス計画」11F 延床面積7,435.99㎡(2,249.39坪) 〔大通り周辺地区〕 2024年8月予定「S-BUILDING札幌大通Ⅱ」11F/B1 延床面積2,968.86㎡(898.08坪) 2024年9月予定「(仮称)大通西6事務所ビル」9F 延床面積5,620.70㎡(1,700.26坪) 2025年3月予定「(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画」13F/B2 延床面積18,840.00㎡(5,699.10坪) 〔バスセンター前駅周辺地区〕 2024年2月予定「N2Fujii」5F 延床面積約874.64㎡(264.58坪) 2024年4月予定「(仮称) 南1東2ビル新築工事」8F/B1 延床面積約5,377.83㎡(1,626.79坪) 2024年5月予定「創成クロス」8F/B1 延床面積約14,335.82㎡(4,336.59坪) 2024年8月予定「(仮称)北海道新聞社東4プロジェクト」9F/B1 延床面積約20,035.04㎡(6,060.60坪) 〔大通南地区〕 2024年9月予定「CONNECT SAPPOTO」13F/B1 延床面積13,975.81㎡(4,227.68坪) 2024年12月予定「(仮称)京阪南3西3オフィスビル計画」11F/B1 延床面積6,541.04㎡(1,978.66坪) 〔統計エリア外:中島公園地区〕 2025年6月予定「(仮称)ライラックスクエア(AXA札幌PJ)」13F 延床面積52,776.88㎡(15,965.01坪) 【札幌ビジネス地区のテナントの動向】 一昨年来の再開発・建替えによる中心部から近接周辺への移転は一段落しましたが、札幌駅前通り地区、札幌駅北口地区の賃料は上昇幅も大きく、比較的賃料の低い駅前通り周辺地区、バスセンター前駅周辺地区、西11丁目駅周辺地区の需要が引き続き堅調に推移しています。 2023年中には5棟の大型ビルが竣工しましたが、一部高価格帯の空室が目立ち、貸室全体の大幅減床の影響は2024年中の新規供給も限られることから、さらに需給のひっ迫した状況で推移するものと思われます。 コロナ禍の終息が明確になり、全般需要の回復も見られましたが、商業施設関連・IT/BPO関連業種を中心に高性能なビルの新規需要は増しており、全体の貸室面積が2017年の水準にあることから、慢性的なオフィス床供給不足は継続しています。 さらに、北海道は経産省の地域未来投資促進法による税制・金融支援、本社機能移転補助金(賃貸料補填)、地方拠点強化税制の活用による企業誘致を進めており、札幌市もスタートアップ立地促進補助金、IT・コンテンツ・バイオ立地促進補助金、本社機能移転補助金等により規模の大小を問わず誘致を強化しており、首都圏からの進出も増加傾向にあります。 【札幌中心部オフィスビルや複合商業施設は新築・建替えは計画見直しも】 2018年の札幌都心の建物容積率の緩和や、市内中心部の賃貸用オフィス不足の状況を踏まえ創設されたオフィスビル建設促進補助制度による新規供給の促進、老朽化ビルの建替え等は計画が進んでいますが、札幌オリンピック・パラリンピックの招致断念、新幹線開通の遅れに加え、建築費の高騰、人手不足などにより、2030年までの竣工を目指していた再開発計画は見直しを迫られているところも出てきました。 そうした状況においても、札幌市が2023年6月に「チーム札幌・北海道」を発足し産官学金による「金融・資産運用特区」の認定を目指す動き、道のラピダス誘致による巨額の経済波及効果、コロナ禍終息にともなうインバウンドの増加など、経済活発化の様相から商業・観光需要とともにオフィス需要の減衰は考えにくく、計画は全般的には急ピッチで進められるものと思われます。 オフィス床を含む市街地再開発計画は、2022~2024年着工2025年完了予定の札幌駅北口周辺地区「(仮称)北6東2・3地区再開発計画」、「(仮称)京阪北7西5オフィス計画」、札幌駅前通り地区「ヒューリックスクエア札幌Ⅱ期」、大通周辺地区「(仮称)札幌4丁目プロジェクト新築計画」、をはじめ、中島公園エリアに(仮称)ライラックスクエア、2026年札幌駅前通り 地区「(仮称)いちご北2西3計画」、「(仮称)札幌北1西5計画」、2027年の大通り地区「札幌ダイビル再開発プロジェクト」、2028年以降の大通周辺地区「(仮称)大通西4南地区第一種市街地再開発事業」、札幌駅前通り地区「(仮称)札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発事業」「(仮称)北海道ビルヂング建替計画」、札幌駅前通周辺地区「(仮称)札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」「(仮称)北5東1(新幹線札幌駅プラットホーム)」「(仮称)住友生命札幌ビル(センチュリーロイヤルホテル)建替計画」「(仮称)北海道新聞社西3プロジェクト」、などの大規模整備が予定されていますが、いずれも数年以上先の竣工を予定しており、オフィス床の慢性的な不足はしばらく続くものと思われます。 | |||
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札幌中心部オフィス 貸室面積と空室面積の推移 | 2023年12月 | ||
2023 年12 月現在の空室面積は45,048 ㎡(13,627 坪)、2022 年は33,478 ㎡(10,127 坪)であり11,570 ㎡(3,500 坪)の増加でした。 今年は5 棟の新規供給があり高額物件を除き大型物件は高稼働率にて竣工しています。地区による年末時点での一時的な空室率の上昇は統計上の竣工時期によるものもありますが、地区相場を大きく上回る賃料を嫌気しているものと思われます。 コールセンターの増床の動きは落ち着きを見せていますが、一般需要の回復、IT/BPO 関連企業の新規開業や業務拡張に伴う増床需要は根強く、札幌中心部のオフィス市況は供給不足が継続しています。2025 年に向けては、大型ビルの竣工が予定されていますが、建築費高騰が賃料の高止まり傾向に影響必至とみて、募集賃料を下げる動きは見られず、フリーレント(賃料部分の無料期間)の増加が見込まれます。 | |||
単位=坪(3.3㎡)
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札幌中心部オフィス 地区別空室率の推移 |
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2023 年12 月現在、全体平均で2.88%の空室率となりました。 札幌駅前通り地区は、2023 年空室率2.85%と2022 年2.98%から0.13%とわずかに減少となりました。中心部として最も需要の高い地区ですが、建替え、再開発により物件が不足しており、動きの少ない年となりました。 札幌駅前通り周辺地区は、2023 年空室率1.32%と2022 年1.43%から0.11%の減少となりました。建替え準備による一時移転も落ち着いたことから、動きの少ない年となりました。 札幌駅北口周辺地区は2023 年空室率7.34%と2022 年3.06% から4.28%の増加となりました。同地区は札幌駅への直結回廊や地下通路に隣接した新しいビルが多く、通信設備などの環境設備がハイスペックであり人気のある地区です。今回の空室率上昇は、8 月竣工の大型ビル「The Link Sapporo」が統計上ほぼ未稼働となっていることが主因です。 大通り周辺地区は、2023年空室率2.82%と2022年2.23%から0.59%の増加となりました。商業地区ですが、人件費高騰、人手不足などにより、閉鎖撤退の影響が出たものと思われます。 大通り南周辺地区は、2023年空室率1.10%と2022年2.31%から1.21%の減少となりました。飲食店などの商業施設の多い地区であり、コロナ禍の終息から新規参入などの出店や関連オフィスの需要が回復したものと思われます。 バスセンター前駅周辺地区は、2023年空室率1.92%と2022年2.08%から0.16%の減少となりました。減少理由としては、高騰する賃料から、比較的値ごろ感のある地区への移転が促進されたものと思われますが、新幹線新駅建設にともなう地下回廊の整備計画などを含む地域であり、テレビ塔周辺の創成川両岸における再開発が見込まれることから、将来立地の獲得に動いた例も見られました。 西11丁目駅周辺地区は、2023年空室率2.99%と2022年2.18%から0.81%の増加となりました。中心部へのアクセスがよく比較的賃料が低く人気のある地区ですが、中心部建替えによる一時退避の回帰が影響したものと思われます。自社ビル売却による中心部移転などもあり、空室率の増加となりました。 | |||
(%)
単位=%
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札幌中心部オフィス 募集賃料の推移 | 2023年12月 | ||
2020 年から統計採用値をより実勢に合わせて把握するため、共益費込みの賃料に改訂してあります。 2023 年の平均賃料は12,181 円と2022 年の11,742 円から439 円の上昇となりました。 2023 年は、新規供給もありましたが、札幌中心部全体の貸室面積は2017 年の水準にあるため、慢性的なオフィス不足は解消されておらず、さらに今後の建築費の高騰が確実視されるため賃料の高止まりに影響しており、供給不足に加え、供給側優位の状況がより強く表われた結果、大幅な上昇となりました。 大型新築ビルの募集賃料は高水準で、募集賃料を押し上げる一番の要因ですが、2022 年に比べてオフィスの縮小や商業系店舗の撤退などによる解約の動きが落ち着いたこともあり、建替えを予定しているビルからの移転需要も一段落したものの、コロナ禍の終息から新規進出の増加、IT/BPO 関連の旺盛な需要により全般的慢性的な供給不足は解消されず、札幌ビジネス地区全体の賃料相場は今後も高止まり傾向で推移するものと思われます。 | |||
単位=円/坪(3.3㎡)当たり
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札幌中心部オフィス 地区別賃料の推移 |
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2020 年から統計採用値をより実勢に合わせて把握するため、共益費込みの賃料に改訂してあります。 札幌駅前通り地区の2023 年における募集賃料は17,606 円で614 円の大幅な上昇となりました。5 月に竣工した「D-LIFEPLACE 札幌」の募集賃料は25,000/坪と高水準であり、最も人気の高い地区であることから、今後も同地区の平均賃料は上昇傾向を保っていくものと思われます。 札幌駅前通り周辺地区の2023 年における募集賃料は13,659 円で303 円の上昇となりました。中心部からの移転需要が高く供給不足が継続していることが一番の要因であると思われます。 札幌駅北口周辺地区の募集賃料は14,944 円で741 円の大幅な上昇となりました。この地区は毎年ハイペースで賃料の上昇が続いており、新築ビルの賃料の影響が大きい地区となっています。8月竣工の「The Link Sapporo」はJR札幌駅東口、創成川通りに面した好立地にあり平均募集賃料は24,000円/坪と高額のため、年末時点では空室率が高くなっています。12月竣工の「T-PLUS札幌」は札幌第一合同庁舎に隣接し札幌駅までの地下回廊に至近であり平均募集賃料は22,000円/坪となっていますが、オフィス区画は満床の見込みとなっております。いずれも地区の賃料相場を大幅に上回っており推移を観る必要がありそうです。この地区は北海道大学に近く、地下鉄南北線北12条駅からのアクセス、地下鉄東豊線札幌駅直結、JR札幌駅からも徒歩圏内で地下歩道が整備されており、比較的新しいハイテクビルが多く人気のある地区です。 大通り周辺地区、大通り南周辺地区、バスセンター前駅周辺地区、西11丁目駅周辺地区は、ビジネス地区の全般的な供給不足、建替えによる募集停止による貸室面積減床の影響からいずれも賃料の上昇が続いていますが、地区の賃料相場を大幅に上回る新築ビルでは成約率が低くなっています。比較的賃料上昇が小幅に抑えられた大通り南周辺地区は空室率も大幅に減少しました。今後も高騰する中心部のビルからの移転需要や、道、市の大型経済政策、コロナ禍終息による景気浮揚、インバウンドの増加などからオフィス需要は高まるものと考えられ、建築費の高騰もあり、募集賃料は上昇傾向が続くものと思われます。 | |||
単位=円/坪(3.3㎡)当たり
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札幌中心部オフィス 新規需要量 | 2023年12月 | ||
単位=㎡
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新規需要量とは貸室面積(供給面積)に対し、今年新たに新規のテナント需要量があったかどうかの増減の数値です。2023 年で言えば2022 年から貸室面積が32,446 ㎡(9,815 坪)の増加(数値はプラスとなります)、空室面積は11,570 ㎡(3,500 坪)の増加(数値はマイナスとなります)。空室面積が増加した分を加算し20,876 ㎡(6,315 坪)が実際の新規需要量です。 様々な要因により変化しますがマイナスの数値であれば縮小、移転、撤退、倒産による景気後退の影響が明確に表れると考えられ、プラスの数値であれば景気回復による進出、増床、拡大移転などの動きがあったことが考えられます。 昨年(2022 年)の数値については、再開発・建替えにともなう募集停止による貸室面積の大幅な減少に加え、一時的な空室面積の増加という著しい数値の逆転が起きたことにより、新規需要量の極端なマイナスとなりました。指標として一般に解釈される景気後退局面であるとは言えず、特異な数値となっている点に留意が必要です。 2023 年は、コロナ禍終息による景気回復に期待感がありましたが、全般的な物価高による閉塞感や人手不足による閉鎖撤退なども観られ、一般には景気回復の実感に乏しい年となりました。一方では、多くの再開発が進み、インバウンド需要の回復が顕著となり、大型経済政策の発表など札幌市経済活動の浮揚感はオフィス需要の増加を加速しているように見受けられます。 | |||
※ 2024年3月28日 「2024年度札幌中心部オフィス市況」の発表にあたり、 プレスリリースを発信いたしました。 →リリースページ | |||
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