相場表

札幌中心部オフィスの市況及び相場  2023年3月


【札幌中心部のオフィスビル市況は供給不足が継続】

 2022年12月末時点の札幌ビジネスオフィス市況は空室面積33,478㎡(10,127坪)と前年同月の空室率2.02%から0.17%増加し2.19%となりました。

 新規供給は、2022年1月竣工の「三共電気6・6ビル」貸室面積1,421.49㎡(430坪)、6月竣工の「札幌22スクエア」貸室面積5,986.77㎡(1,811坪)、8月竣工の「ヒューリックスクエア札幌」貸室面積5,223.13㎡(1,580坪)、8月竣工の「J1札幌北口ビル」貸室面積2,208.92㎡(668.2坪)、10月竣工の「北海創成ビル」貸室面積2,169.52㎡(656.28坪)、12月竣工の「NW SQUARE」貸室面積1,819.63㎡(550.44坪)の6棟です。

 12月竣工の「NW SQUARE」は統計上100%未稼働となっており空室率上昇に影響しますが、他はいずれも高稼働率となっています。
 6棟合計では18,829.46㎡(5,695.92坪)の新規供給がありましたが、再開発のため募集停止した既存ビルが11棟あり、市内中心部全体の調査対象貸室面積は79,537.07㎡(24,060坪)の大幅な減少となりました。

 コールセンターの増床やIT関連のオフィス需要は依然として旺盛であり、6月竣工の「札幌22スクエア」にも10月には大手IT企業の開発センターが入居しました。これらの需要は新規開設や拠点増設のため二次空室が生じない場合が多く、依然として大口の募集床が不足気味となっています。

 地区再開発の着手が本格化しており、建替え予定による大型ビルの募集停止が相次ぎ、昨年はコロナ関連の公共利用のための短期的な需要などにより空室の増加につながらなかった特異な例もありましたが、本年は徐々に短期需要の減少もあり、オフィス床全体の減少にもかかわらず、空室率はわずかに上昇しました。

 2023年には5棟、2024年には5棟、2025年も計画だけで4棟の大型ビルが竣工を予定していますが、大きな減床予定が無いため、実質的な新規供給増となる見込みで、竣工後の2025年には、需給状態も落ち着くことが予想され、空室率の上昇、募集賃料の低下傾向に転換するものと推測されます。

 近年は災害等に備えるためインフラや周辺環境を含めたBCP対策(事業継続計画)の観点から高機能オフィスビルが求められており、本年以降に着手される再開発地区において数年先の竣工時には中心部オフィス地区の都市機能に大きな変革が出るものと予想されます。


【2023年~2024年竣工予定のオフィス床を含む新築ビル】

〔駅前通地区〕
2023年5月「D-LIFE PLACE札幌」 13F/B1
延床面積約15,867.74㎡(約4,800坪)、基準階面積926.35㎡(280.22坪)

〔西11丁目地区〕
2023年7月末予定「(仮称)南2西11計画」5F
延床面積約2,728.29㎡(約825.31坪)、基準階面積462.56㎡(139.92坪)

〔札幌駅北口地区〕
2023年8月末予定「(仮称)札幌北6西1オフィス計画」13F/B1
延床面積約18,455.84㎡(約5,582.89坪)

2023年12月予定「T-PLUS札幌」4F/B1
延床面積約6,800.00㎡(約2,057坪)、基準階面積1,423.70㎡(430.67坪)

〔大通り周辺地区〕
2023年10月末予定「(仮称)桂和大通西3ビル」14F/B2
延床面積9,884.49㎡(2,990.06坪)、基準階面積436.53㎡(132.05坪)

2024年1月予定「ほくほく札幌ビル」13F/B3
延床面積17,350.18㎡(5,248.43坪)

〔バスセンター駅周辺地区〕
2024年4月下旬「(仮称)南1条東2丁目ビル」8F
延床面積約5,375.68㎡(1,626.14坪)

2024年5月下旬「(仮称)N4E4ビル」8F/B1
延床面積約14,335.82㎡(4,336.59坪)、基準階面積1,435.73㎡(434.31坪)

2024年8月予定「(仮称)北海道新聞社東4プロジェクト」9F/B1
延床面積約20,035.04㎡(6,060.61坪)

〔大通南地区〕
2024年9月末予定「(仮称)南3西1オフィス計画」13F/B1
延床面積約13,948.19㎡(4,219.33坪)、基準階面積759.73㎡(229.82坪)


【札幌ビジネス地区のテナントの動向】

 昨年から再開発・建替えにより中心部から近接周辺への移転も多く見られましたが、札幌駅前通り地区、札幌駅北口地区の賃料は上昇幅も大きく、比較的賃料の低い駅前通り周辺地区、バスセンター駅周辺地区、西11丁目駅周辺地区の需要が堅調に推移しています。

 2022年中には6棟の大型ビルが竣工しまたが、いずれも高稼働となっており、貸室全体の大幅減床の影響は2023年中の新規供給も限られることから、さらに需給のひっ迫した状況で推移するものと思われます。

 コロナ禍の収束が明確にならず、全般需要の回復は顕著には見られませんでしたが、商業施設関連・IT/BPO関連業種を中心に高性能なビルの新規需要は衰えず、ここ数年の慢性的なオフィス床供給不足は継続しています。

 札幌市では、スタートアップ企業への小口補助制度をはじめ、コールセンター・バックオフィス等立地促進補助金を設けて企業誘致しており、市内へのオフィス新設、増設、本社移転を促進しています。企業の立地リスク分散や働き方改革などの気運に後押しを受けて、補助金制度の期限までは地方進出を企画する大手企業の大規模床、中小スタートアップ企業の新事業所開設によるオフィス需要は今後も高まるものと思われます。


【札幌中心部オフィスビルや複合商業施設は新築・建て替えが活発化】

 2018年の札幌都心の建物容積率の緩和や、市内中心部の賃貸用オフィス不足の状況を踏まえ創設されたオフィスビル建設促進補助制度による新規供給の促進、また北海道新幹線の札幌駅開業・冬季オリンピック・パラリンピック招致を見据えた建替え・再開発の勢いは引き続き活発化しており、計画が進んでいます。
 慢性的なオフィス床供給不足の中で、受け皿となる新築・建替え、再開発事業の動向には、今後も多くの注目が集まるものと思われます。

 オフィス床を含む市街地再開発計画は、2022年着工2025年完了予定の札幌駅北口周辺地区「(仮称)北6東2・3地区再開発計画」、札幌駅前通り地区「ヒューリックスクエア札幌Ⅱ期」、「(仮称)いちご北2西3計画」、「北海道ビルヂング建替え計画」をはじめ、2026年札幌駅前通り周辺地区「(仮称)札幌北1西5計画」、2028年の札幌駅前通り地区「(仮称)札幌駅南口北4西3地区第一種市街地再開発事業」、札幌駅前通周辺地区「(仮称)札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発事業」「北5東1(新幹線札幌駅プラットホーム)」、大通周辺地区「(仮称)大通西4南地区第一種市街地再開発事業」、などの大規模整備が予定されていますが、いずれも数年以上先の竣工を予定しており、オフィス床の慢性的な不足はしばらく続くものと思われます。


※調査対象データ
  対象地区:駅前通り、駅前通り周辺、札幌駅北口周辺、大通り周辺
  大通り南周辺、バスセンター駅周辺、西11丁目駅周辺、
  対象ビル:対象地区内の延床面積が330平方メートル(100坪)以上の主要オフィスビル。374棟。
  構造は、4階建以上の建物とし、空調及びエレベーター設備の整ったビル。

※表示
・単位はすべて平米(坪換算併記)
・面積計算においては小数3桁までの計算を基本としています。
・注記の無いグラフ・表・文章中の面積は小数1位または小数3位を四捨五入。
・賃料計算においては面積計算乗除の小数1位を四捨五入。
・より正確な数値をご要望の場合はお問合せください。

※ 調査対象地域 (114KB)
札幌中心部市況地図ガイド



札幌中心部オフィス 貸室面積と空室面積の推移 2022年12月

 2022年12月現在の空室面積は33,478㎡(10,127坪)、2021年は32,476㎡(9,824坪)であり1,001.65㎡(303坪)の増加でした。

 今年は6棟の新規供給があり大型物件は高稼働率にて竣工しています。

 総貸室面積の減少にも関わらず空室が増加した理由は、後期竣工の新築ビルが統計上空室となっている影響が大きいと思われます。

 一方では、コールセンターの増床の動き、IT/BPO関連企業の新規開業や業務拡張に伴う増床需要は強く、札幌中心部のオフィス市況は供給不足が継続しています。2025年に向けては、大型ビルの竣工が予定されており、一旦は空室率の上昇と募集賃料の落ち着きを見せると予想されますが、来年以降も慢性的な供給不足に加え、ポストコロナのオフィス全般需要の回復、2023年に開業予定の北広島市のボールパーク、2030年に予定される新幹線の開通、道央圏の観光需要増大を見込む大型ホテルの建設、市街地再開発事業による複合商業施設の建設ラッシュ等により、ビジネスニーズの増加は確実視されており、今後数年の建替え・再開発によるオフィス床増床が待望されます。


札幌市中心部 貸室面積と空室面積の推移
単位=坪(3.3㎡)


札幌中心部オフィス 地区別空室率の推移

 2022年12月現在、全体平均で2.19%の空室率となりました。

 札幌駅前通り地区は、2022年空室率2.98%と2021年0.83%から2.15%の増加となりました。
 竣工間もない大型ビル「ヒューリックスクエア札幌」の空室と、建替えのために移転した大型テナントの影響で統計的には空室率の上昇となりましたが、依然として最も需要の高い地区であり、供給不足に変わりなく、年末時点における一時的な上昇と考えられます。

 札幌駅前通り周辺地区は、2022年空室率1.43%と2021年2.23%から0.8%の減少となりました。建替え準備による募集停止の影響を受けたものと思われます。

 札幌駅北口周辺地区は2022年空室率3.06%と2021年1.37%から1.69%の増加となりました。同地区は札幌駅への直結回廊や地下通路に隣接した新しいビルが多く、通信設備などの環境設備がハイスペックであり人気のある地区です。今回の空室率上昇は、12月に竣工した「NW SQUARE」が統計上未稼働であるためと、駅前通り地区同様に再開発による移転の影響が出たものと考えられます。

 大通り周辺地区は、2022年空室率2.23%と2021年2.03%から0.2%の増加となりました。コロナ禍による低迷業種の閉鎖、撤退もあり、新規竣工ビルへの回帰による移転空室の発生も影響したものと思われます。

 大通り南周辺地区は、2022年空室率2.31%と2021年2.30%から0.01%と横ばいとなりました。再開発計画のための移転等が落ち着いてきており、小規模な新規参入、撤退はあるものの、2022年6月竣工の「札幌22スクエア」には大手IT企業の開発センターが入居するなど、新規供給ビルの稼働率は高く、全体として空室率の変化は見られませんでした。

 バスセンター駅周辺地区は、2022年空室率2.08%と2021年1.64%から0.44%の増加となりました。増加理由としては、10月竣工の「北海創成ビル」延床面積3,178.63㎡(961.54坪)の稼働が未定である点が大きくなっています。全般に新築ビルの募集賃料は高騰していますが、この地区の平均賃料を大きく上回っており早々な契約に結びついていない状況です。

 西11丁目駅周辺地区は、2022年空室率2.18%と2021年3.78%から1.6%の減少となりました。実質的に空室率が減少したのはこの地区だけですが、中心部へのアクセスがよく比較的賃料の低い地区への人気が高まったものと思われます。大口解約は見られず、中心部からの拡張移転などもあり昨年に続き空室率の低下となりました。


(%)札幌市中心部 空室率の推移グラフ
単位=%
札幌市中心部 空室率の推移表



札幌中心部オフィス 募集賃料の推移 2022年12月

 2022年の平均賃料は10,166円と2021年の9,766円から400円の上昇となりました。

 2022年は、新規供給もありましたが、建替えのため大型ビルの募集停止が相次ぎ、全体的には大幅な減床となりました。数年来の慢性的な供給不足に加え、供給側優位の状況がより強く表われた結果、大幅な上昇となりました。

 大型新築ビルの募集賃料は高水準で、募集賃料を押し上げる一番の要因ですが、2021年に比べてオフィスの縮小や商業系店舗の撤退などによる解約の動きが落ち着いたこともあり、建替えを予定しているビルからの移転需要は一段落したものの、コロナ禍の収束を待って新規進出の増加、IT/BPO関連の旺盛な需要により全般的慢性的な供給不足は解消されず、札幌ビジネス地区全体の賃料相場は2024年までは高止まり傾向で推移するものと思われます。


札幌市中心部 オフィス賃料
単位=円/坪(3.3㎡)当たり


札幌中心部オフィス 地区別賃料の推移

 札幌駅前通り地区の2022年における募集賃料は15,654円で916円の大幅な上昇となりました。8月に竣工した「ヒューリックスクエア札幌」の募集賃料は27,000/坪と高水準であることから、今後も建替え予定のビルが竣工する事を考えますと同地区の平均賃料は上昇傾向を保っていくものと思われます。

 札幌駅前通り周辺地区の2022年における募集賃料は11,782円で525円の上昇となりました。中心部からの移転需要が高く既存ビルの新規募集賃料の上昇が一番の要因であると思われます。

 札幌駅北口周辺地区の募集賃料は13,023円で559円の上昇となりました。8月竣工の「J1札幌北口ビル」の平均募集賃料は22,000/坪ですがほぼ満床となっており、相場の上昇に寄与しているものと思われます。この地区は北海道大学に近く、地下鉄南北線北12条駅からのアクセス、地下鉄東豊線札幌駅直結、JR札幌駅からも徒歩圏内で地下歩道が整備されており、比較的新しいハイテクビルが多く人気のある地区です。さらに2023年12月には「北8西1地区第一種市街地再開発事業」による「T-PLUS札幌」の竣工が予定されており、今後も相場の上昇傾向は続くものと思われます。

 大通り周辺地区、大通り南周辺地区、バスセンター駅周辺地区、西11丁目駅周辺地区は、ビジネス地区の全般的な供給不足、建替えによる募集停止による貸室面積減床の影響からいずれも賃料の上昇が加速しており、比較的賃料上昇が小幅に抑えられた西11丁目駅周辺地区は特に人気が高くなっています。今後も高騰する中心部のビルからの移転需要や、ポストコロナの景気浮揚の可能性から募集賃料は上昇傾向が続くものと思われます。


札幌市中心部 地区別賃料の推移グラフ
単位=円/坪(3.3㎡)当たり
札幌市中心部 地区別賃料の推移表



札幌中心部オフィス 新規需要量 2022年12月
札幌市中心部オフィス 新規需要量
単位=㎡

 新規需要量とは貸室面積(供給面積)に対し、今年新たに新規のテナント需要量があったかどうかの増減の数値です。2022年で言えば2021年から貸室面積が79,537.06㎡(24,060坪)の減少(数値はマイナスとなります)、空室面積は1,001.65㎡(303坪)の増加(数値はマイナスとなります)。空室面積が増加した分を加算し-80,538.71㎡(24,362.96坪)が実際の新規需要量です。
 様々な要因により変化しますがマイナスの数値であれば縮小、移転、撤退、倒産による景気後退の影響が明確に表れると考えられ、プラスの数値であれば景気回復による進出、増床、拡大移転などの動きがあったことが考えられます。

 今年の数値については、再開発・建替えにともなう募集停止による貸室面積の大幅な減少に加え、一時的な空室面積の増加という著しい数値の逆転が起きたことにより、新規需要量の極端なマイナスとなりました。指標として一般に解釈される景気後退局面であるとは言えず、特異な数値となっている点に留意が必要です。

 2022年は、コロナ禍の先行き不透明感にも関わらずオフィスの需要減退には大きな影響は見られませんでした。建替えのため多くのビルが募集停止したことから、大幅な貸室面積の減床となり、移転による実質的な二次空室も期待できず、地区により一時的な空室率上昇がみられたものの、オフィス需要は根強く、2023年の新規供給もすでに高稼働率による竣工と見られることから、慢性的な供給不足が継続するものと思われます。
 ポストコロナによる需要回復、経済発展に寄与する地区再開発や大型施設の開業準備などのため、オフィス需要はさらに高まるものと考えられます。



※ 2023年3月30日 「2023年度札幌中心部オフィス市況」の発表にあたり、
             プレスリリースを発信いたしました。           →リリースページ


※ 「2023年度札幌中心部オフィス市況」をダウンロードしていただけます。
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